温風低圧塗装機は、５０年以上前にヨーロッパで開発された、低圧塗装システムです。 ＨＶＬＰ（大風量・低圧力）技術は、今や低圧塗装に欠かせない技術の一つとして塗装業界に認知されています。 そのＨＶＬＰ低圧塗装システムの中でも、「温風低圧塗装機」は、極限まで周囲への飛散を減らすことにこだわった商品です。 　ヨーロッパのカタログにはこのように記載されております。 　　　60% Zeitersparnis gegenüber dem Einsatz von Walze und Pinsel 　　　　（刷毛やローラー作業に比べ、60% の時間で塗装作業が出来ます。) 　　　70% Materialersparnis gegenüber Hochdruckspritzen 　　　　（高圧型塗装システムに比べ、70%の塗料を節約します。） 温風低圧塗装機の原理 超低圧塗装による、高い塗着効率 一般的に知られる「スプレーガン」は、コンプレッサーで生成される圧縮空気をスプレーガン先端で衝突させることで塗料を霧化し、圧縮空気の圧力で塗料粒子を飛ばすため、塗装面に完全に付着せずに跳ね返り（飛散）が伴いました。 また、塗料に圧力をかける「エアレススプレー」も先端のチップで塗料を霧化し、その圧力で塗料粒子を飛ばすので塗装面では同様に跳ね返りによる飛散が多く伴います。 そのため、塗装場の周囲に塗料が付着するため、屋内での塗装作業には排気設備を設ける等の対策や、屋外では飛散防止ネット等の大掛かりな飛散対策が必要となります。 温風低圧塗装機は、この「飛散」に着目した塗装機器で、塗装対象面から塗料を跳ね返らないよう、0.05MPa（0.5kgf/cm2）以下の低い圧力でスプレーガンに劣らない品質で塗装を行なう事を目的に作られました。 一般的には圧力が低い場合は、「塗料の霧化性能」が落ち、仕上がりが悪いと思われますが、ABAC塗装機は毎分2,000L以上となる、大量の低圧空気の衝突効果を応用し、塗料粒子の霧化促進を行う事で、高品質塗装に対応した性能を実現。 この結果、業界トップクラスである塗着効率※１約90%と高品質塗装の両立化が実現し、排気設備も小規模で塗装が出来る画期的な塗装システムとして知られております。 また、この飛散の少なさは、周囲への「臭い」を軽減し、周囲設備等への塗料付着を予防するため、屋外等の住宅密集地でもスプレー塗装が容易となり、作業場所をあまり選ばずに高意匠性に優れたスプレー塗装が可能となります。 　　　 （イメージ図：温風低圧塗装機と一般的なスプレーガンとの飛散の違い） ※１：塗着効率：スプレーガン先端より吐出される塗料の何割が塗装面に付着するかを示す割合。 　　（参考：中高圧スプレーガン=約30%、エアレス機器=約70%、低圧スプレーガン=約65%） 圧縮空気（コンプレッサー）を使用しない塗装システム 温風低圧塗装機は、前述の通り最大0.05MPa(0.5kgf/cm2)という、低い圧力で塗料を霧化します。 この極端に低い低圧空気で細かい霧を形成するには、毎分2,000Lを越える大風量のエアー供給が必要となり、コンプレッサーでは中型・大型タイプが必要となり、重量も重く可搬性は優れません。 そのため、全ての温風低圧塗装機は低圧ながら大量のエアー供給が可能なブロアーを採用しました。 SGシリーズは100Vで駆動する小型・軽量のブロアーで可搬性に優れ、優れた耐久性で1日の連続塗装にも対応する仕様となっております。 塗装に適したエアーを供給するブロアーユニット エアーの供給源となるブロアーユニットは、超低圧・大風量のエアーを内蔵された多段式高速タービンで形成します。 回転運動によるエアーの供給は常に息継ぎの無い安定した状態でスプレーガンに供給され、高速回転（毎分21,000〜2,5000回転）による軸摩擦熱は、吸い込んだ空気の水分を蒸発させます。 また、全機種オイルレス構造ですので、吹き付けエアーには水・油の無い理想的なドライエアーを供給する事が出来ます。 そして、内部タービンの熱により、吹付け空気温度がスプレーガン先端で周囲温度プラス10〜15℃上昇させますので、 塗装面の（指触）乾燥時間を短縮し、梅雨時期のブリスターの心配も軽減されます。 もちろん温風により塗料の伸びを良くします。 エアーカーテンが霧化した塗料を包み込み、エアーブラッシング効果で強い塗膜を作ります。 上図は、ABAC温風低圧塗装機のスプレーガンから放出されるエアー・塗料のモデル図です。※２ スプレーガン先端のフロースリーブ（エアーキャップ）は、低圧・大風量のエアーを円錐（えんすい）状のエアーカーテンを形成します。その中をノズルから放出された塗料が霧状に拡散され塗装面に到着します。 もちろんエアーカーテンの中で拡散される為、塗装面到達まで周囲へ飛び散る事も無く、低圧という比較的スピードの遅い状態で霧化された塗料は塗装面に到達するので、塗装面から跳ね返る事も無く、塗着効率が飛躍的に高まります。 （周囲へ飛散する約10%の塗料は、エアーカーテンに混じる分の塗料です。） ※２：他社低圧温風機器は、機構が異なるので上図とは特長が異なります。 スプレーガン先端のフロースリーブ（エアーキャップ）は、低圧・大風量のエアーを円錐（えんすい）状のエアーカーテンを形成します。その中をノズルから放出された塗料が霧状に拡散され塗装面に到着します。 また、上記の「大量の低圧エアー」が塗装面をブラシするように押し込むため、付着した塗料粒子は「刷毛でしごく」ように、塗装面をブラッシングします。そのため、塗料粒子は石垣を組むように高い密度で塗膜を作るため塗料が持つ密着力を最大限に発揮します。1952年の発売当初「空気の刷毛」と呼ばれた起因はここにあります。 ABAC温風低圧塗装機の特長 当社の取り扱う、ABAC温風低圧塗装機は、ブロアーより発生する大量の超低圧エアーの流量・圧力を確保するため、他社製品の低圧ガン、温風ガン、HVLP塗装機に比べ、エアーホースの口径も太く、スプレーガン等への接続にカプラーを用いていません。 これは、ブロアーから発生するエアーに力（圧力）が無いため、経路を一部分でも狭くすると、エアー量が減少し、塗料を霧化する時に必要な絶対風量が落ちてしまうからです。 エアー量が減少すれば、周囲への飛散が増え、霧化の状態も悪くなる可能性があるため、当社製品は、ブロアー吐出口からスプレーガン先端まで同じ口径で、損失を抑え性能を高めています。 また、スプレーガンは全て上カップ式（重力＋加圧式）を採用しています。 低圧環境下では、スプレーガン先端のエアーキャップから吸引吐出を行う場合、力が弱く十分な吐出量を得られなくなり、効率的な塗装が難しくなります。 そのため、他社低圧温風塗装機では、ノズル口径もΦ2.0mm以下が基準となりますが、当社のスプレーガンはこのような弱点を改善するために、独自の方式を採用し、塗料粘度の高い塗料でも安定した吐出量を確保する設計になっています。 つまり、様々な塗装環境に対応し、お客様が常に使い勝手が良く、効率的な塗装が出来るよう、独自の仕様を有した塗装機と認識ください。
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